大判例

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福岡高等裁判所宮崎支部 事件番号不詳〔1〕 判決

主文

本件控訴を棄却する。

当審において国選弁護人に支給した分の訴訟費用は、被告人の負担とする。

理由

弁護人佐藤通吉の控訴趣意は、同弁護人作成名義の控訴趣意書記載のとおりであるから、ここに、これを引用する。

控訴趣意第一点について。

所論に鑑み、原判決を調べてみれば、原判決は、被告人は、昭和二七年一〇月五日施行の鹿児島県囎唹郡志布志町教育委員会委員選挙に立候補したものであるが、法律で認めていないのに、自己の当選を得る目的で同年一〇月四日午前八時頃から同日六時頃までの間同県同郡同町田之浦、内之倉方面に於て、田井村肇、下山吉満、坪山善蔵各所有の自動車三輪車一台宛計三台を順次傭入れて選挙運動のために使用したものである。と判示し、被告人の右所為は、公職選挙法第一四一条第一項、第二四三条第二項にあたるものとして、被告人を罰金五千円に処していることが明らかである。しかして、ここに、いわゆる選挙運動とは、特定選挙につき、特定の公職の候補者の当選を目的として、投票を得又は得させるために直接又は間接に、必要且つ有利な一切の行為をすることを指称するところ、今原判決挙示の証拠によれば、被告人は、選挙運動のために使用する拡声機を持つて歩く代りに、所論自動三輪車を使用したものであり、その使用は、結局、自己の当選を目的として、投票を得るため、直接又は間接に必要且つ有利な選挙運動をするためであつたことが認められるので、同車の使用は、選挙運動のために使用することが主目的であつたことが窺い得られるのである。されば被告人が所論のように、同車を拡声機等の運搬だけに使用し、その運搬途上において同車上から演説又は連呼をした事実がなかつたとしても、なお、被告人は、同車を選挙運動のために使用したものである、といつても何等妨げないものといわざるを得ない。原判決の認定するところも結局右と同一趣旨であつて、原判決は、所論のように、被告人が自動三輪車を使用し、拡声機等を使い、もつて演説或は連呼等の選挙運動をしたものとは認定していないところである。果して然りとすれば、原判決の認定には何等間然するところはない。論旨は、結局、独自の見解のもとに原判決を非難するもので、採用することを得ない。

同第二点について。

公職選挙法第一四一条は、選挙運動のために自動車、拡声機、船舶を使用するについての制限を規定し、その適用は、最初は衆参両議員、都道府県知事及び都道府県教育委員会の委員の選挙に限られたところ、昭和二六年法律第二五号の改正により、都道府県会の議員、市長及び市の教育委員の選挙が加えられ、更に、昭和二七年法律第三〇七号による同法の改正により、同条第一項第四号により町村会議員、町村長、町村の教育委員会の委員の選挙を加え、その改正法律は、昭和二七年九月一日から施行されたのである。さすれば、原判示昭和二七年一〇月五日施行の本件選挙には右第一四一条第一項第四号の規定が適用され、しかして同規定によれば、本件選挙運動には、自動車である自動三輪車の使用おも禁止されたのであるから、被告人の本件所為が前説示のとおり、右第一四一条第一項第四号に違反し、同法第二四三条第二号により処断されることは多言を要しないところである。それで、原判決には何等法令の適用を誤つた違法はなく論旨は理由がない。

以上の理由により、刑事訴訟法第三九六条に則り、本件控訴を棄却し、同法第一八一条第一項により、当審において国選弁護人に支給した分の訴訟費用は、被告人の負担とする。

よつて主文のとおり判決する。(昭和二八年一二月二日福岡高等裁判所宮崎支部)

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